images/icon_green.gif 研究紹介

  • (物理側からの履歴) 僕自身は熱力学、統計力学に基盤をおいていますが、平衡状態ではなく、もっとダイナミックで生き生きした自然現象を理解する論理を獲得したい、というのが一貫して目指していることです。そこで、力学系、確率過程もふまえて、非平衡現象、カオス、時空カオス、大自由度カオスといった研究を行ってきました。
  • (物理からの生命の理解) もちろん、ダイナミックで生き生きした現象の典型は生命です。生命状態に普遍的な原理、法則があるでしょうか?僕は、それはあると信じていますし、この10年余りの研究でそのいくつかが見えてきたと思っています。成長して複製するための多成 分の統計法則、揺らぎによる成長状態選択原理(適応)、不安定振動と相互作用による細胞分化のしくみ、揺らぎと進化の間の一般関係などです。これらを通して、生命システムの成長性、安定性、可塑性(外界に適応して変化する可能性)の定量的理解に迫ろうとしています。物理学はこれまで、新しい領域にそのウィングを広げて、そこに普遍則を定式化してきました。ここから、「生命とは何か」にどこまで迫れるでしょうか。
  • (なぜ今生命システムの物理か) 理論側で言えば、力学系、統計力学の発展により、大自由度でダイナミックな生命現象へ挑むベースができてきたことがあります。そして、そうした現象への洞察が計算機でのモデルシミュレーションにより深まってきたこともあります。一方で、実験側ではこの10数年で蛍光イメージング技術、1細胞、1分子測定、セルソータ、遺伝子発現解析、次世代シークエンサなど、次々と新しい技術が開発され、大自由度の動態、揺らぎを様々な時間スケールで測れるようになりました。そこで、理論と実験が協同して螺旋的発展を遂げる段階になりました。
  • (非平衡の物理と生命現象) 生命現象は平衡状態ではありませんから、熱統計力学を非平衡に拡張しよう、という試みと生命システムの物理はおおいに関係があります。ただし、非平衡というとそれだけでは制限がなさすぎるのに対し、生命システムには単なる非平衡一般より強い拘束条件があります。熱力学は「平衡状態」という大きな拘束を課すことにより一般法則を抽出しました。生命システムを例えば大自由度の各成分が定常的に増えていき再生産できる系、と規定することで、一般的法則が見出される可能性は十分あります。実際、この方向で研究を進め、そこで垣間見えてきた法則は現在、実験で検証されたり、検証中だったりします。皆さんとともに21世紀のCarnot,Clausiusを目指せたらと思います。
  • (複雑系の物理) ダイナミックな階層的システムに宿る、安定性や可塑性を理解したいという生命システムの研究は、細胞、発生、進化、生態といった生命現象のレベルだけにはとどまりません。生命システムにもっとも近いところでは、脳、認知の問題があります。ここには生命システムの理解よりも難しい問題もありますが、これまで記憶、学習の動的過程の解明にも挑んできました。また、(こちらは実験は困難でなかなか難しいですが)社会システムの歴史的発展の理解、といったことにも興味は持っています。

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